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ファフナー

願望

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 体の感覚が手に集まるのがわかる。
それは、俺があの時手の中にあるものにしか集中できなかったから。だから今だってこうして憶えてるんだ。どんなに悔やんだって、思い出したって、決して戻ってきたりはしない。そんなことはわかっている、いや、俺はわかった振りをしているんだろう。本当は今日、今この瞬間にでも俺の前に総士が現れて、「ただいま」って申し訳なさそうに呟くのを見てから、確かに帰ってきたことを実感するために、思いっきり抱きしめてやる、そんなことを毎日期待してるんだ。
朝は憂鬱だ。
総士が消えていった感覚から始まって、泣きそうになるのをこらえて、父にそれを悟られないようにして。よく物が見えない目と、所々動かなくなった体を引きずって遠見先生のもとまでいく。悪いままの結果を聞いては無理に励まされて、こちらも愛想笑いを返す。いつまでたっても総士は俺のもとにきてくれない。総士がこの島に居てくれたら、こんな少しも島の人の役に立たない体だって、「よく頑張ったな」とかは言ってはくれないかもしれないけど、きっと優しく撫でてくれる。目が見えない不安だって、総士がいろんな言葉を俺にかけて安心させてくれる。一緒に寝て、朝俺が泣きそうになったら、手を握って、髪をさわって、「僕はここにいる」って俺に言い聞かせてくれるんだ。


いつの日か、夏がはじまる前の梅雨の時季、総士がいないのが本当に心苦しくなって眠れない日があった。いつまでたっても心臓が痛くて、涙はとめどなく溢れて枕が冷たかった。思いっきり拳に力を入れて耐えてみようともしたけれど、力が抜ける瞬間に、虚無感が体中を這うのを感じた。そうしてまた、悲しくなった。
どれくらい時間が経ったのかはわからなかったけど、眠りについたとき、俺は夢の中にいることがわかった。体が自由に動かせる。ファフナーに乗る前みたいに、すごく体が軽くて、目だって何でも映せる。自然でいることが、こんなに心地よいとは知らなかった。だから、夢だってすぐにわかった。
俺の部屋に、俺は立っていて、しばらくしたら後ろを振り返る。何故振り返ったのかはわからないけど、ただなんとなく。
後ろには総士が居た。
「ただいま」って、やっぱり俺が思っていた通り申し訳なさそうに、少し下を向きながら言った。
俺は嬉しくて、涙がでる前に思いっきり抱きしめた。総士はすごく温かかった。
「おかえり」って震えた声で俺が言えば、総士も腕をまわして抱き返してくれる。
そのまま床に総士をねかせて、じっと顔を見つめて、二人で笑いあった。
何度もキスをした。
音をたてたり、総士の舌を吸い取ってやったりすれば、総士は体をぶるっとさせて、ちょっとばかし目を潤ませた。
俺の涙でびしょびしょになった総士の顔を手で拭ってやる。これじゃどっちが泣いてるんだかわからないな、なんて総士は言って、俺の首に腕をもっていて、そのまま頭を撫でてくれた。
それから俺は、なんだか眠くなってきて総士と一緒に布団に入った。総士は片方の手で俺の手を握って、もう一方の手で体を撫でた。背中とか肩、腕、腰、総士の白くて綺麗な手で撫でられた場所は温かくなっていて、それが体全体に広がったと思ったら、総士の顔をちゃんと映していた目が、次第に閉じていった。

(僕はここにいる)

夢の中から現実へ、現実の眠りの中へと向かうその時、確かに総士がそう言った。


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