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ファフナー

カレーが食べたい(劇場後)

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夏も終わりかけていた。しかしまだ蒸し暑い。今日は日差しも強く、青く澄んだ空が広がっていた。
そんな中、総士を自分が働く洋食屋、楽園に招待した。


二年の間、自分の心は人から見れば静かなものであったらしい。他の者から随分と自分は穏やかになったなどと言われた。無口なのは変わらないが、どこか排他的であった性格は丸みをおびたらしい。
しかしそれは表面上の話であった。自分一人でいるとき、圧倒的な孤独を感じた。抑えきれない不安に支配された。平和な島で暖かな空気にふれながら一人泣き続けた。誰にも話せず、そしてそれを悟られることはないよう。
どんなにこの島が楽園に戻ったとしても帰らぬ人がいてはそこに自分の心の安寧は生まれてこなかった。自分の拠り所は彼といる場所であって、彼のいない場所などただの空間にすぎなかった。

自宅の布団の中、ワルキューレの岩戸、総士の部屋、海岸、ひとり山、そこが自分だけになれる所であった。その場所に赴き総士へ思いを馳せる。
帰って来い、早く。帰ってきてくれ、総士。
そしてその言葉が実現しないととわかると総士が帰ってこないことを思い知らされ、その痛みに打ちひしがれた。目を強くつむるがとめどなく涙はあふれた。嗚咽がもれ手で口を塞ぐ。心臓が苦しむ。そのうち立っていられなくなり、しゃがみ込み自分の腕で己の身体を抱きしめる。一頻り泣き終え息を整えたら、また平和な生活へと戻る。

まるで儀式のようなその行いを総士が帰ってくるまで続けた。
他の人に迷惑や心配をかけたくはなかったからみなの前では落ち着いたように振舞う。
しかし自分の心には悲しみしかなかった。

今、総士にふれられる。総士の存在のぬくもりと重さを感じる。総士の声が耳をとおして脳に響き渡る。
これが幸せだ。これが喜びだ。
あふれる感情は自分では制限できない。
総士が愛おしい。
自分のすべてがその感情に向けられていた。
総士と島の平和に溶け込みたくて、総士を外にひっぱりだし連れまわす。二人で見て感じるものは知っていることなのに新しく感じられ、また美しかった。生きている、存在する実感が湧いた。
そして二年の間の距離を埋めるため、自分のことを知って欲しかった。総士がいない間に自分が何をし、何を考えていたかを。


「今日は暑いから外にでたくない。大体昨日も海へいったばかりだろう、僕を労われ」
「総士をどうしても連れて行きたいんだ」
「帰ってきてからそればかり言ってるぞ」
「頼む、総士」
「・・・どこへ行くんだ」
「楽園だ。俺、そこで働いてる」
「知ってる」
「お前に見てほしいんだ、俺が働いてるとこ」
「料理自慢か」
「違うって」

お互いに笑いあった。
そして総士の手を掴んだ。そんなに食べれないからな、と総士は少し困ったように言って歩きだした。
自分の悲しみを知っていた総士は帰ってきてからはとことん自分に甘かった。自分のしたいようにさせてくれる。
自分はそんな総士に更に依存していった。

「随分綺麗になったな」

楽園につき、総士はそう言った。
自分は遠見もいるから、と答えてメニューを総士へ渡す。

「・・・なんだこれは」
「名前は溝口さんがつけるんだ。俺じゃないぞ」
「そうか。・・じゃあ一騎カレーを頼む」
「あぁ」

総士は笑っていた。
無意識のうちに手が総士へとのびた。総士の髪を手ですく。総士の匂いがした。甘く懐かしい、いい香り。
堪らなくなって、ここが店であるということも忘れて総士の服に手をかけようとした。

「お暑いねぇ、お二人さん。外も中もあちぃあちぃ」
「かっ、一騎君っ!何してるの!」

溝口さんと遠見が店の入り口にいた。そういえば入るとき誰もいなかったな、と思い返す。
総士はそっぽをむいてしまった。当事者を回避するつもりだろう。

「・・・総士にカレー作ろうと思って」
「一騎君の嘘つき・・」
「本当だ」
「まぁ嬢ちゃん許してやんなって」

溝口さんがケラケラ笑いながら遠見に言う。遠見は不満そうな顔して店の奥へといってしまった。あとで謝っておかねば。

「店で盛んじゃねぇっての」
「・・・・すみません、なんか総士が可愛くてつ「何を言っている」

総士にも怒られた。睨まれている。しかし顔が赤いので威圧感がない。
そんな総士も可愛いのでにやけてしまった。思いっきり足をふまれた。かなり痛い。
溝口さんは呆れてしまっていた。

「・・・カレー作るんじゃないのか」
「はい・・・」
「早くいけ」
「はい・・・」

ほら行くぞ、と溝口さんに声をかけられへこみながら厨房へむかう。

「・・・おいしくなかったら怒るからな」

総士がそんなふうに呟くものだからやる気が俄然にわいた。こんなに胸が躍りながら料理するのはいつ以来だろうか。
この時間、この空間にある全てが優しかった。

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